報告:JAFSA-KAIE交流プログラム Workshop on Best Practices for Orientation Programs for In-Bound Students(2017年12月1日、早稲田)
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 「KAIE(カイエ、Korean Association of International Educators)」は、韓国の国際教育交流団体で、1998年に設立されました。
JAFSAとは設立以来交流があり、毎年2月頃に開催される年次大会にはJAFSA訪問団を派遣しています。
一方でJAFSAもKAIEからゲストを招待し、日韓交流のプログラムを展開しています。
この度12月に、KAIEよりゲスト7名を招き、短期受け入れ留学生に対する「オリエンテーション」を考察するワークショップを開催致しました。
詳しくは以下の報告をご覧ください。
→KAIE公式HP
→KAIEについてのご紹介、JAFSA HPより
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(各項目をクリックすると当該箇所に飛べます)I. 開催データ
II.ワークショップ内容
III.JAFSA参加者報告書
III-a. 報告1:韓国、KAIE訪問団より
III-b. 報告2:日本、JAFSA会員大学の参加者より(名古屋外国語大学)
III-c. 報告3:日本、JAFSA会員大学の参加者より(国際教養大学)
I. 開催データ
JAFSA-KAIE交流プログラム "Workshop on Best Practices for Orientation Programs for In-Bound Students" |
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日 時 : 2017年12月1日(金) 9:30-17:45 |
参加者数:15名/JAFSA会員大学14校より + 7名/KAIE会員大学7校より |
【JAFSA参加者所属大学 】 (地域別50音順)
<東北>国際教養大学
<関東>青山学院大学、上智大学、千葉大学、
中央大学、テンプル大学ジャパンキャンパス、
東京大学、東京電機大学、 立正大学、
早稲田大学
<中部> 名古屋外国語大学
<関西> 近畿大学
<中国> 広島経済大学
<沖縄> 沖縄科学技術大学院大学
【KAIE参加者所属大学】 (英語名abc順)
Ajou University (亜洲大学校) , Hanyang University (漢陽大学校) ,
Incheon National University (仁川大学校), Konkuk University (建国大学校),
Soongsil University (崇実大学校) , University of Seoul (ソウル市立大学校) ,
Yeungnam University (嶺南大学校)
【講 師】 (敬称略)
《ORGANIZER》
-Brian Masshardt (Director, East Asian Studies, Musashi University)
《CO-FACILITATORS》
-Stephen Hesse (Associate Director, International Center, Chuo University)
-Tomomi Kumai (Independent Intercultural Consultant)
【使用言語】 英語
II. ワークショップ内容
Opening remarks / Participant introductions |
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Session I: Case Study (KAIE’s presentations) “Orientations at Korean Universities” |
Session II: Presentations on Orientation Topics -Creating Connections and Activating Students -Addressing Challenges and Adjusting to Change -Initiating Awareness: Study-Life Balance Abroad |
Introduction of Intercultural Communication Center (ICC) and Equality Diversity Center of Waseda University |
Breakout Sessions Session III: “An Orientation Should Be…” Session IV: Group Orientation Planning and Development |
Session V: Group Presentations & Discussion of Best Practices |
III. JAFSA参加者報告書
III-a. 報告1:韓国、KAIE訪問団 (日本語で執筆)
1. 参加動機及び目的
韓国で留学生管理、日本交流、短期研修受入などを担当する職員としては今回の日韓の大学実務者が集まったワークショップのテーマはとても魅力的で、本人達の今後の仕事にも非常に役に立つと判断された。
2010年以前までは交換留学生が中心だった韓国の大学には最近まで学部留学生がかなり増えて来た上、短期研修プログラムについての需要も高まり、最初の入国後のオリエンテーションを通じた情報提供の重要性が常に増してきた。
ただ、留学生を相手に韓国人と同じ方式のオリエンテーションでは充分な効果を得られない事をほぼ全ての大学担当者達は気づいて来た。
それで、今回のワークショップでは日本の優秀大学の留学生現況及びオリエンテーションの特徴を把握し、それを各々の本学のオリエンテーションに反映して改善する事を優先した。
2. 日本の大学を訪問しながら
《事務局注:KAIE訪問団の方達には、ワークショップの前日に都内のJAFSA理事大学を訪問いただきました。キャンパス見学や国際部署の方達と情報交換を行なっており、その報告です。》
午前中は日本大学を、午後には早稲田大学を訪問して大学の国際関係者と対話を進めながら国際交流の現況を把握し、留学生のためのサポートシステムがどう整っているかを確認した。
日本大学は私立大学として長い歴史を持ち、キャンパスの規模も素晴らしく、他の大学に比べて有利な立地と条件を背景に留学生誘致に優位を占めている姿が見られた。結果として、留学生は自然な増加傾向にある感じを覚えた。
早稲田大学は日本を代表するほどの知名度に加え、積極的な留学生誘致と体系的なサポートシステムがとても印象的だった。特に、一部の部署だけが留学生を担当する感じではなく、大学全体が留学生を自然に受け入れてすべてのプログラムを共に行っている感じに近かった。確かに自分たちの長所を理解して、それを100%活用する事で外国人留学生なら誰もが進学を希望する大学の地位を獲得し、その結果が実際の留学生人数に繋がった姿だった。
3. ワークショップに参加しながら
武蔵大学と中央大学の米国人教員の留学生の生活や心理に関するプレゼンテーションはとても有意義で、留学生担当者としての自覚を再度持たせてくれた。また、漠然に頭の中で整理されていた留学生たちの適応過程と彼らの心理状態を学術的に解説する事で理解しやすく、入学から卒業までの各過程で必要なプログラムも設計も可能になった。
また、日本の大学担当者と国際交流情報を共有してノウハウを教えあう事で、日本と韓国の大学達がそれぞれ置かれている状況と対応方法が比較できたのはもちろん、交流ネットワークも広げられた。
韓国が未だに良くならない経済と就職状況によって一部の大学を除いては留学生の誘致が計画通りには行かない現状に比べ、日本は政府の積極的な支援と改善される経済などを背景に大学が留学生誘致に活発に挑んでいる印象が強かった。
その裏には人口減少と人手不足が効いた事もあるが、とにかく今の環境は単なる留学だけでなく、その後の就職なども踏まえる留学生達には十分な魅力があるに違いなかった。
グループディスカッションとプレゼンテーションも良かったが、大学担当者が共に学んでオリエンテーションを大きく改善するほどの情報はなく、みんなの意見をまとめる段階で終わったのは少し残念に思えた。できれば、他の大学に見本になれるケースを事前に調査してこれを共に討論を重ねながら学べる機会になれたらさらに良いワークショップになると思った。
4. 参加した後に
今回のワークショップへ参加させて頂いたことで、大学職員として再び積極的に働けるモチベーションができたと思う。
豊富な知識と情報の交換・共有はもちろん、多様な大学の担当者たちが一緒に集えるチャンスが多くない分、今後は更に多くの大学が共に共感できるワークショップになれたらと思う。
III-b. 報告2:JAFSA会員大学/名古屋外国語大学 阿部 沙恵氏
受け入れ留学生に対するオリエンテーションに特化したワークショップということ、またKAIE(Korean Association of International Educators)のメンバーも参加するという、大変興味深い内容だったため案内をいただいてすぐに参加を決めた。
まず、KAIEメンバーの建国大学校と嶺南大学校からそれぞれの大学で行っているオリエンテーションについての発表があった。どちらの大学も韓国の文化体験等を含む、充実した内容のオリエンテーションを行っていることが分かった。
その後、武蔵大学のBrian Masshardt氏、中央大学のStephen Hesse氏、熊井和美氏より『Initiating Awareness: Study-Life Balance Abroad』、『Culture Shock』、『Activating Students from volunteers to Leaders』について話を伺った。
カルチャーショックやメンタルヘルスに関しての重要性は理解していたが、本学のオリエンテーションではあまり大々的に取り扱ってこなかったため、今後オリエンテーションの中にどう取り入れていくべきか、とても勉強になった。
また、早稲田大学のスチューデントダイバーシティセンターからの発表があった。
早稲田大学では、国籍・人種・性別・障がいの有無に関わらず多様な価値観や生き方が尊重されるキャンパスづくりを行っており、その中でも2006年に設立された異文化交流センター(ICC)では学生が主体となり、国境・国籍・文化の枠を越えて、フィールドトリップやスポーツイベント等、数多くの活動を活発に行っているようだ。
留学生と日本人学生が積極的に交流を持つ場としても機能しており、本学でもそのような機会を増やす活動を現在まさに行っているため大変参考になった。
最後のグループプレゼンテーション&ディスカッションでは、大学に在籍している留学生数をもとに、5名程度のグループに分かれ、各グループでオリエンテーションを構成した。グループは韓国の大学と日本の大学が合同で作られたこともあってか、各グループでとても活発なディスカッションが行われていた。
私たちのグループでは反転オリエンテーションを構成し、留学生達がいつでも必要な情報をオンライン上で得られるというスタイルにし、オリエンテーションを最低限の時間で済ませることによって、留学生とより親密なコミュニケーションを取れるようにと考えた。それぞれのグループごとで様々な工夫が見られた。
この研修を通して、オリエンテーションの重要性や、留学生の立場に立って実施するという必要を強く感じた。また日本国内の大学だけでなく、韓国の大学での取り組みも共有でき、こういった機会はめったにないため、非常に有意義な研修だった。
オリエンテーションの内容や方法について行き詰っていた部分があったが、研修に参加したおかげで知識やアイディアをたくさん得ることができた。早速3月に行うオリエンテーションに活用したいと思っている。
III-c. 報告3:JAFSA会員大学/国際教養大学 佐藤 好恵氏
今回のワークショップではオリエンテーション構成時に役立つ着眼点や他校の実施状況等を詳しく学ぶことができ、現状の留学生向けオリエンテーションを新しい視点から再考察するとても良い機会をいただけたと感じている。
ワークショップは参加者同士の自己紹介を含めたアイスブレーキングから始まり、セッションは主に5部で構成されていた。
まず第 1 部では他大学のケーススタディを学んだ。
Minkyung LEE 氏(Konkuk University)と Sangsu LEE 氏(Yeungnam University)からそれぞれの大学でのショートプログラム向けオリエンテーションの内容を共有していただいた。他大学のオリエンテーション内容を直接説明していただくことで本学のオリエンテーションを客観的に考えることができ、新たな発見が多かった。
2部では今回のワークショップの講師を務められている Brian Masshardt 氏(武蔵大学)、Stephen Hesse 氏(中央大学)、熊井知美氏の3名から、カルチャーショック等の留学生が直面する問題や、オリエンテーションを構成する際にキーポイントとなる要素を学んだ。
カルチャーショックについては、軽度なものであっても継続して違和感を持ち続けることで学生へ大きな負担となることを再認識し、カルチャーショックがもたらす症状、そのような時にどのような行動が自分自身の助けになるのかを具体例を挙げて事前に伝えることの重要性を学んだ。
オリエンテーション構成については各情報を提供する(1)時間、(2)場所、(3)関係者の3つの切り口から考え、特に(3)関係者に含まれてくる学生ボランティアに関しては、ボランティア学生を将来的にリーダーにしていくためにどのようなワークショップを設けているかという実例が大変興味深かった。
午後は、会場を提供していただいた早稲田大学からスチューデントダイバーシティセンターの活動の紹介がおこなわれた。異文化交流に加え、ジェンダーとセクシュアリティーや障害学生支援の観点から学生に寄り添う活動にとても感銘を受けた。

グループワーク
その後はワークショップの3・4部目としてオリエンテーションはどのようにあるべきか、構成と改善のための講義がおこなわれた。
最後に5部目として、これまでの学びを総括するグループプレゼンテーションが行われた。
1グループ4-5名ほどで形成され、理想的なオリエンテーションを考察した。オリエンテーション期間短縮の為にオンラインで事前に情報提供をおこなったり、映画鑑賞やヨガ等のリフレッシュをスケジュールへ多く取り込んだりするなど、さまざまなアイデアがあげられた。
すべてのプログラム終了後は参加者同士の情報交換会が行われた。
本ワークショップはとても内容が充実しており、文面に全てを書ききることがなかなか難しい。
また、全体を通して参加者間での交流が頻繁におこなわれ、お互いの大学のオリエンテーション実施状況について具体的な情報交換をすることができた。